老人ホームの倒産が相次いでいます。介護職として考えるべきことは。

 

 

静岡市の特養が突然閉鎖したニュースが出ていました。

ニュースになっていないだけで、これまでにも多くの介護施設が閉鎖している現状があります。

今後の介護施設、介護サービスはどのようになっていくのでしょう。

 

スポンサーリンク

老人ホームも倒産する

イメージ的に老人ホームは倒産しない、しにくいように思えます。

事実、会社運営に関する税制上では株式会社などに比べると優遇されています。

また、収入の大部分が社会保険の介護報酬から支払われているので、急激な収入減なども少ないです。

それでも倒産します。

倒産する理由はそれぞれでしょうが、一番の理由は

人手不足

であると思います。

現在の高齢者社会の日本では、老人ホームのお客である高齢者の方はたくさんいます。

今でも多くの特養では入所するのに何十人待ちの状態です。

お客さんはたくさんいるにも関わらず、その会社で働きたいという人がおらず適切なサービスが提供できずに倒産してしまう状態になっています。

極端な考えですが、会社は従業員が半分になってもすぐには倒産しません。

現場は相当ゴタゴタはしますが、顧客の数が変わらなければ入ってくる収入は減らないのでお金は回ります。

逆に、顧客の数が半分になると収入も半分になり、遅かれ早かれ倒産します。

顧客の数は減っていないのに老人ホームが倒産してしまうのは、かなり長期に渡って人手不足の状態が続いており、従業員を含む組織全体が疲弊してしまっている現状があります。

また、簡単に機械化できる仕事ではなく、ほとんどの部分を人間が直接一人ひとり対応しなければならない仕事内容であることも、人手不足による運営難に拍車を掛けています。

 

 

その他のどの業種の仕事よりも人手がいる仕事にも関わらず、どの業種よりも人手が不足していっているのが現状の介護施設です。

 

倒産しているのは老人ホームだけではない

当然、倒産している介護施設は老人ホームだけではありません。

ヘルパーステーション、デイサービス、ショートステイ、ケアマネ事業所、訪問看護ステーションなど、介護保険サービスの事業所は日常的に閉鎖や倒産をしています。

老人ホームに比べると利用者に与える影響がまだ少ないのとその数が多いのでいちいちニュースになっていないだけで、人手不足で運営難になった介護事業所は毎月、いえ毎週どこかで倒産しています。

高齢者の数が最も多くなるのはこれからです。

まだ、高齢者のピークではありません。

団塊の世代が本格的に介護サービスを利用するようになるまでまだ数年あります。

そこに向けて更なる介護サービス、施設の充実を図る必要がある中で、それを前にして逆に施設が倒産し減ってしまっているのが今の日本の介護の現状です。

そしてその倒産の数は、倒産する一番の理由である人手不足が解消・改善される兆しが全くないので、増えることはあっても減ることはないです。

 

想像以上に厳しい現状が介護の業界にはあります。

 

介護の仕事が人手不足な理由

なぜ介護の仕事は老人ホームを倒産に追いやってしまうほどに人手不足なのでしょうか。

私個人は介護の仕事以外で正社員として従事した経験がないので正確ではないのかもしれませんが、介護の仕事だけが特別しんどくて大変な仕事なわけでは全然ないです。

どんな仕事だって大変です。

しんどい仕事だから人が集まらない、続かないというのは本当の理由ではないです。

となると一番の理由はやはり、

収入の低さ

であると思います。

その他の業種と比べても、介護職の給料は低いです。

人手不足の理由のほとんどがこの収入の低さが原因であれば、介護職の収入がもっと高くなれば人手不足は一気に解消されます。

課題は非常に明確なのですが、それができないから人手不足が悪化し倒産する施設が増加しています。

ではなぜ介護職の収入は人が辞めてしまうほどに低いのでしょうか。

 

介護職の収入が低い理由

税制上優遇されている介護施設で安定感のある介護報酬を受け取り、お客である高齢者の数も増えることはあっても減ることはない、そんな介護の仕事の給料が低い理由。

社長や施設長が多くの報酬を貯め込んでいるからでしょうか。

それも0ではないと思いますが、そもそも介護施設に限らず全ての会社の社長というのはお金を儲けるために会社を設立し運営しているので、少しでも多くの報酬を得ようとするのは別におかしなことではありません。

基本的な介護報酬の低さが原因でしょうか。

それもあると思います。施設の収入は介護報酬に完全に依存しているので、介護報酬が下がれば何の落ち度がなくても施設の収入は減ります。

例えば、年間1億円の収入がある施設の介護報酬が改訂されてマイナス3%となったとしたら、300万円の収入減です。

全く同じサービスを提供していても、誰か一人リストラするか全員の給与を少しずつ下げるか、更に利用者を増やすかしないと同じ収入が維持できなくなります。

そんな介護報酬の改定が介護保険がスタートした2000年から定期的にされており、今日まで報酬が上がったことなど一度もありません。

「加算」という形で報酬が増額される仕組みは次々に作られていますが、基本報酬は下がり続けており、加算を取るためには人件費や設備費の増加が必要なものばかりで、全く加算になっていないものも多いです。

会社の売り上げに直結している介護報酬が下がり続ければ、当然その会社で働く従業員の給与も上がりません。

ただそれも、限られた介護報酬の中から増え続ける高齢者の介護報酬を出さなければならないとなると、基本報酬を下げざるを得ないのも仕方がないのが現状です。

介護報酬が低いのではなく要介護者が多過ぎるのです。

 

その他にも様々な介護職の収入の低さの理由は出てくると思いますが、個人的に思う一番の理由は、

介護経営のやりがいの無さ

であると思います。

国によって報酬が決められているため、自分で勝手に料金を変えることはできません。

どんなに良い介護を提供したとしても、入ってくる報酬はほとんど変わりません。

介護の仕事自体に世間の興味が低いため、メディアに大きく取り上げられることもありません。

取り上げられるとしたら、施設倒産や虐待などのバッドニュースばかりです。

施設の規模、利用定員の数によって施設の売り上げもほぼ確定し、それ以上に増えることはありません。

つまり手堅く一定の売り上げを上げることはできても、大きく儲けることのできないのが介護事業です。

「地域福祉のために役に立ちたい!」という理念で介護事業を立ち上げる社長も当然多くいると思いますし、そういった理念も大事です。

ただ慈善事業でもボランティアでもないので、介護事業であっても儲ける必要はあります。

一般企業と同じように、少しでも多く儲けて良い生活をしたい、その思いは現場の介護職だけではなく介護施設を経営している経営者だって同じです。

むしろリスクと借金を追ってわざわざ会社を経営しているのであれば、尚更その気持ちは強いはずです。

にも拘わらず、大儲けもできない、経営者として目立つこともない、派手で奇抜なことをすると行政から指導を受けたり地域から「福祉施設なのに」ということを言われる。

はっきり言って経営者としてのやりがいや魅力はかなり低いのが介護事業です。

会社のトップが自分の仕事にやりがいが無い状態で、会社がまともな方向に進むわけがありません。

そうなれば当然、そのしわ寄せは現場に来ます。

社長が「もう疲れた。もう続ける意欲が無い」と思った時点で、その介護施設は倒産します。

 

介護経営のやりがいの無さ

経営者のモチベーション低下

事業の成長鈍化、売り上げ減少

職員の減給、ボーナスカット

従業員のモチベーション低下

離職者増加

人材不足

倒産

 

介護職としてやるべきこと

老人ホームの倒産が会社トップのやりがいの無さなどの理由なら、現場の介護職にはどうしようもないのではないか、と思えますが、そうでもあるし、そうでもないとも言えます。

経営者1人で会社のこと全てを決定して運営できるわけではなく、特に老人ホームなどの大きな法人になると会社運営のキーパーソンも多くなります。

トップが引っ張っていく部分もあれば、現場から引き揚げていく部分もあると思うので、トップがダメだから現場は何もできず会社も必ずダメになってしまうこともないです。

ただ1つ、現場の介護職の方が共通して考えるべきだと思うのが、

自分が介護施設経営者だったら

という視点で今自分のいる施設を見るべきです。

そもそも、「自分が借金背負ってまで現在の介護施設を経営したいか?」ということも含めて考えてみるべきです。

そうすれば、現場からの一方的な見解だけではなく多角的に考えられます。

基本的に雇用者と労働者の価値観と考え方は立場的に真逆なことが多いので、どちらか一方の視点での問題提起は不十分になりがちです。

 

また今後、ドンドン介護施設が倒産していく中で、新しく施設を経営しようと思う人がどれだけ出てくるでしょうか。

さっさと儲けてダメになったらすぐ潰せば良いやとしか考えていない金儲け主義の人間が経営する介護施設ばかりが増えてしまうと、そのしわ寄せは確実にその施設で働く介護職にきます。

すでにきています。

誰も介護施設を建てなければ介護職として働く場所はありません。

そうなったら自分で建てるのか、他の仕事に就くのか、そうならないように現在の施設を何とかするのか。

経営者だからとか従業員だからとかではなく広い視野と意識で一人ひとりが考えることができれば、介護業界は大きく前進すると思います。

できなければ、このままズルズルとジリ貧な業界に落ちていくことになると思います。

それでも介護業界全体に行政が大きく関わっているので、世の中の状態に合わせて微調整を繰り返しながら何とか介護保険を維持するための政策がとられ続けるはずです。

それはそれで悪くないのかもしれません。

ただ介護現場に漂う疲労感は今後ますます増加していき、それに反比例して介護職の幸福度は減少していくことなります。

介護の仕事は悪い仕事ではないです。

むしろする価値のある仕事だと思います。

それなのに介護の仕事をしている人が疲弊してしまっている現状がとても残念です。

同じ働くなら前を向いて仕事をしたいものです。

マイナスな発言ばかり出てしまいがちな現状の介護現場を、ポジティブな意見で溢れる業界にしたいですね。

皆で考えましょう。

 

 

経験談 施設の倒産
スポンサーリンク
オムツと介護の知識