介護保険のサービスを受けるためにはケアマネジャーが作る「ケアプラン」が必要になります。
日本中で介護保険を使って介護を受けている高齢者の数だけケアプランが存在することになります。
内閣府の資料を見てみると、平成29年4月の時点で要介護・要支援認定を受けている高齢者の数は633万人となっています。
認定を受けていてもサービスを利用していない方もいるとは思いますが、ざっと600万のケアプランが日本中で作られていることになります。
そんなケアプランについての思いを伝えます。
現行のケアプランは意味が無い
私自身今現在、ケアプランを作成する仕事もしているため、日々ケアプランと向き合って仕事している一人です。
そんな自分の作っているケアプランも含めて、



今のケアプランは意味がない
と思います。
なぜ意味がないかと言いますと、作ったケアプランが全く活用されていないからです。
これは介護の仕事をしている人や介護サービスを利用したことのある人ならわかると思いますが、普段の介護の中で、どれだけケアプランを使っているでしょうか。
介護現場でケアプランのことを思い出す機会がどれだけあるでしょうか。
恐らく0です。
ケアプランには課題や目標、サービス内容などが記載されていますが、そのケアプランを作ったケアマネジャー自身でさえ、
「その方の短期目標はなんですか?」
と聴かれても答えられないのではないかと思います。
ケアプランを作ったケアマネジャーも、ケアプランを作ってもらった利用者や家族の方も、作って最初にちょっと説明を受けてサインして印鑑を押せば2度と見ることなどないのが現状のケアプランです。
これは、ケアプランを基に作る各サービス事業所の「個別援助計画」も同様です。
なので「ケアプランは意味がない」と思います。
「ケアプランは意味が無い」ということを踏まえた上で
だからと言ってケアプランが悪いということではありません。
あるのは「ケアプランは役に立っていない」という事実です。
その事実をケアプランを作っているケアマネジャーはしっかり認識しておくべきです。
悪いのはケアプランではなく、何も考えずに役にも立っていないケアプランを量産しているケアマネジャーです。
ただ、ケアマネジャーだけが悪いと言えば違うとも思います。
私もケアマネジャーの資格を取って10年になりますので、その間に何度もケアマネジャー研修に参加しました。
その研修の中では、ひたすら現行の役に立っていないケアプランの作り方のみを教え込まされて、そうやって作られたケアプランが実際にどう使われているのかなどは全く語られません。
むしろそういったケアプランを作ることこそがケアマネジャーの最も大事な仕事であるという風に教えられます。
愚直で真面目なケアマネジャーであればあるほど、その言葉を鵜呑みにして研修の翌日から役に立たないケアプランを作ることに尽力されると思います。
そういった意味ではケアマネジャーも被害者であるかもしれませんが、そうであっても少し考えれば自分の作ったケアプランが役に立っていないことなどすぐにわかることなので、そのまま放置するのではなく行動に移すべきです。
ケアプランが役に立っていないならば、やるべきことは2択だと思います。
か、
のどちらかだと思います。
ケアプランが現場で役に立つレベルまで活用する
役に立っていないのであれば、役に立つように改善し働き掛けるのが一番の方法です。
ただそれは凄く難しいなと感じています。
「ケアプランなどどうでも良い」なんて思っている人は誰もおらず、皆、大なり小なり必要なものだと認識した上で作ったり読んだりしています。
にも関わらず全く使われていない現状があるのであれば、それを活用するレベルにまで引き上げるのは相当の労力と時間が掛かります。
ケアプランの書式は国で統一されているため勝手に変更することはできません。
なので文章の書き方だったり、ケアプランの取り扱いなどを意識的に変えていく必要があります。
ただ実際のところ、ケアプランを作っているケアマネジャーは直接高齢者を介護せずに、デイサービスやヘルパーなどの現場の介護士がケアをします。
そして利用するサービスが増えれば、高齢者1人に関わるサービス事業所の数も増えます。
更にケアプランはサービスを受ける高齢者やその家族のために作られるものなので、高齢者本人がケアプランの内容をしっかり認識していなければ活用などできません。
ケアマネジャー自身は介護をしない状況で、自分の作ったケアプランを各サービス事業所に徹底して意識付けてプラン通りのケアが実施できるよう指導や助言をし、高齢者や家族にもケアプランの内容を覚えてもらい目標に向かって努力してもらうように働き掛けるなんて、現実的に不可能です。
ケアマネジャーが時間と労力を掛ける場所はそこではない、と思います
ケアプランは役に立たないから無視する
無視すると言ってもケアプランがないと高齢者は介護サービスが受けられませんし、ケアプランを作ることがケアマネジャーの仕事でもあるので、当然作成はします。
しますが、それがケアマネジャーの最も大事な仕事ではなく、むしろ最も大事ではない仕事として認識した上でケアプランを作成することが必要だと思います。
つまり、役に立たないケアプランに1時間も2時間も掛けて作るのではなく、10分や15分でさっさと作ってしまい残りの時間は別の役に立つことに使うべきです。
「別の役に立つこと」とは何かといえば、何でも良いと思います。
高齢者の生活全てを介護サービスと家族介護のみでフォローできるケースばかりではありません。
日常生活の中で行き届かない部分が必ず出てきます。
家族は仕事で時間的な制限があり、サービス事業所は制度的な制限があり、そのできない部分のフォローができるのは、ケアマネジャーだけだと思います。
そこをフォローするのが「別の役に立つこと」です。
その内容は訪問先によってバラバラなので、実際に訪問して考えるしかありません。
そんな大それたことをしなくても、ただケアマネジャーが訪問して高齢者や家族の話を聴くだけでもしっかり役に立ちフォローできていることも多いです。
事務所のパソコンに向かっている時間を高齢者に向かうようにするだけです。
ケアマネジャーがするべきこと
重要なのは何をするのかということではなく、



ケアプランなんて役に立っていないので、そんなものを作ることに時間を掛けて事務所に籠もってないで、高齢者やその家族やサービス事業所にとって1mmでもプラスになることは何か、自分に今できることは何か、を意識すること
です。
現状を意識することです。
意識できていないことは行動にも移せませんし結果も変わりません。
まずは現状を認識してそのことを意識することから何事も始まると思います。
ケアプランのことについて書きましたが、これはケアプランに限ったことではないと思います。
当たり前に教えられて当たり前にやっている介護が、本当に意味と価値のあることなのかを日々考えた上で行動するべきです。
現場レベルのことから制度的なことまで内容は様々だと思いますが、
「あれ?これって本当に必要なの?意味があるの?」
という疑問から始まり、
「じゃあ自分がやるべきことは何?」
と行動につなげることが、介護業界のレベルアップにつながっていくものと思います。
まとめ
ケアプランや個別援助計画書を介護現場レベルで役に立つように日々努力しているケアマネジャーや事業所もあると思います。
それは素晴らしいことだと思います。
ただ、多くのケアマネジャーにそこまでの意欲やガッツはないと思いますので、ならば現実問題として今の自分できることは何かを考える方が遙かに有意義だと思います。
長々と書きましたが、一番言いたいことをまとますと、



ケアプランは意味が無い
ということです。